信州大学アクア・イノベーション拠点では、COIプログラム令和4年度加速支援(科学技術振興機構/JST)の支援を受け、「革新的膜モジュール・吸着材を用いた水浄化システムの海外展開・現地定着普及に向けた継続的実証」を実施しています。

 テーマ2「東アフリカ地域での中規模浄水・給水システムのパイロット評価(テーマリーダー:手嶋勝弥 先鋭材料研究所所長/卓越教授/学長特別補佐)」では、タンザニア連合共和国アリューシャ県レマンダ村に、100世帯規模の給水装置を設置し、給水の実証試験を開始しました。当地を含む東部アフリカの一部では、地質に由来するフッ素が多量に含まれる飲用水を利用しています。そのため、骨フッ素症などのフッ素過剰摂取が課題となっており、その解決が望まれています。

 実証試験の開始にあたり、2023年1月27日(金)に駐タンザニア連合共和国特命全権大使の三澤大使、現地政府関係の要人、信州大学関係者、及び多数の住民の参加を得て、浄水装置の設置お披露目及び移管の式典を執り行いました。

式次第

日時:1月27日(金) 13:00~15:00
場所:タンザニア共和国レマンダ村

  1. あいさつ
    • レマンダ村村長
    • アリューシャ県 長官代理
    • アルメル―州 知事代理
    • 水研究所 Rector/CEO Dr. Adam O. Karia
    • 信州大学 卓越教授 手嶋勝弥、教授 小松一弘
    • 駐タンザニア連合共和国特命全権大使 三澤康様
  2. 植樹式
  3. レマンダ村住民より謝意

 式典は、当日の13:00よりレマンダ村の給水装置の設置場所付近の特設会場にて開催しました。まず、設置場所のレマンダ村の村長より挨拶があり、その後アリューシャ県の長官代理、アルメル―県の知事代理より、浄水装置や日本への期待が述べられました。さらに、水研究所学長のDr. Adamより現地の水問題に対する現状認識や、タンザニア国内での水処理や水供給に関する教育等について説明がありました。続いて、本浄水装置を設置した信州大学の手嶋卓越教授より、浄水装置の概要や搭載するフッ化物イオン吸着材・重金属イオン吸着材などの信大クリスタル※1についての説明、小松教授より給水装置の現地定着に向けた今後の取り組み計画を発表しました。さらに、日本大使の三澤大使から今回の技術的協力に対する感謝と日本タンザニア間の持続的なビジネス展開に対する期待などが述べられました。

 式典では、給水装置の周辺に給水装置を守る植樹を行い、給水装置を現地で大切に管理運営することとしました。式典会場の周辺では、レマンダ村に暮すマサイ族の住民約300名が集まり、マサイの独特な衣装のマサイシュカをまとった伝統的な踊りで、給水装置の設置を祝福しました。

 今後、信州大学ではタンザニア等の発展途上国村落部での水処理システムの普及・定着に向け、現地での水質の管理、給水装置の管理・運転の実施の技術移転、新規設置場所選定、及び受容可能な費用での給水装置設置・水供給などを実施する計画です。

※1 信州大学手嶋・林・山田研究室が世界を先導する無機結晶材料育成技術「フラックス法」により育成される結晶材料および関連材料の総称。本給水装置には、フッ化物イオンを吸着除去するものと、重金属イオンを除去するものの2種類の信大クリスタルが搭載されている。

 
参考情報:
InterAqua2023のWeb展示に関連情報を記載しています。浄水装置及びフッ素吸着材の詳細情報を記載したポスターをダウンロードしていただけますので、是非アクセスください。
URL
https://unifiedsearch.jcdbizmatch.jp/nanotech2023/jp/interaqua/details/a0ffVvAqb40

給水装置に隣接した場所に特設の会場を設け、水供給システムの設置お披露目及び移管の式典を挙行しました。多くの現地住民が式典会場を訪れ、給水装置の設置を祝福しました。

 

給水装置に掲げられたタンザニア国旗と日本国旗、及びプロジェクトの協力機関の表示を前に記念撮影。前列左より、三澤大使、信州大学手嶋卓越教授、信州大学小松教授、水研究所Dr. Adam、アリューシャ県長官代理、アルメルー州知事代理。

 

給水装置の設置場所の全景とレマンダ村の住居。手前に設置された蛇口から浄水された水を利用することができます。左奥に見えるのはメルー山です。

 

給水装置の近影。複数の浄水タンク充填されたろ過材で順に水が浄化されます。本装置の稼働には電力が不要です。電力インフラが整備されていない発展途上国の村落部でも運転ができます。